ちょっと特殊な遺贈
(1)ペットへの遺贈
人は、遺留分を侵害しない限り自分の財産を自由に処分する権利を有していますが、現在の日本ではペットなどの動物を受取人として財産を遺贈することはできません。どうしてもペットに財産を残したい場合、ペットを世話してくれること条件に、世話してくれる人を受遺者に指定して財産を渡すという方法があります(負担付遺贈)。生前に当事者間で何の話もなくいきなり遺言でペットの世話を頼むシーンは考えにくいですが、この場合、受遺者は断ることができます(ペットの世話は断るが財産をもらうというわがままはダメ)。
断られるのは困る、ということでより確実なものにするためには、生前に負担付で死因贈与契約を結ぶ方法があります。財産をあげる人が亡くなったことにより効果が発生するという点では負担付遺贈と同じですが、こちらは、遺贈のように一方的なものではなく、「自分が亡くなったら財産をあげます。その代わりペットの面倒を見てください」「亡くなった後はペットの面倒を見ます。その代わり財産ももらいます」という契約になり、契約である以上勝手に撤回はできないため、負担付遺贈よりは安心できそうです。
(2)一般法人への遺贈
それでは、例えば会社の創業者が、自分が亡くなったら財産をその法人へ遺贈したいという場合はどうでしょうか。法人は相続人にはなれませんが、財産を受け取ることはできます。しかも、受け取った法人には「相続税」がかかりません!・・・しかし、そんなうまい話は世の中にはなく、法人には、ただで財産をもらった受贈益に対して「法人税」等がかかることになります。一般的に税率が30%前後のため、それなりの負担です。当たり前ですが、土地等の不動産をもらっても納税は現金です。もし、その法人に欠損金がある場合にはただちに納税ということにはなりませんが、含み益を持っている会社は株価の上昇に対して株主に課税が生じる可能性があります(前回の記事参照)。
法人は相続人ではないため、たとえ同族会社であっても相続後の遺産分割協議に参加することはできません。確実に法人へ財産を渡すためには遺言(又は死因贈与契約)による必要があります。