相続財産評価 最高裁が判断へ
実勢価格より大幅に低い路線価に基づいた相続財産の評価が適切かどうかについて争われた訴訟で、最高裁が3月15日に弁論を開き、高裁までの相続人側敗訴の判決が見直されるかどうか注目が集まっている。
一・二審判決によれば、原告の相続人は東京都と神奈川県のマンション計2棟を2012年に相続、路線価に基づいて約3億3,000万円と評価し、銀行からの借入れもあったことから相続税額をゼロとして申告した。一方で、相続発生の数年前に購入した際の価格は約13億8,700万円であり、国税当局による不動産鑑定評価額は約12億7,300万円であった。
国税当局はこうした価格差を踏まえて路線価による評価は妥当でないと判断し、路線価ではなく不動産鑑定評価額が時価にあたるとして約3億円の追徴課税を行った。
相続税や贈与税の算定には、通常路線価が使われる。これは国税庁が毎年、主要道路に面する土地について路線価を発表し、算定基準としている。路線価は土地取引の目安となる公示地価の約8割とされ、実勢価格より低いのが一般的となる。この実勢価格と路線価の差を利用した節税は広く知られており、現金より不動産で相続した方が税金が安くなりがちで、節税目的で不動産を購入する富裕層も多い。
今回のケースでは、国税当局が財産の評価を見直すことができるルール(財産評価基本通達6項)を使い、追徴課税に踏み切った。これに対して相続人側の原告が反発して訴訟に発展した。19年8月の一審・東京地裁は、課税処分は適法と判断し、二審・東京高裁も下級審の判断を支持した。相続人側が劣勢ではあったが、最高裁は当事者の意見を聞く上告審弁論を開くこととした。これは、最高裁が高裁判決を見直す時が多く、これまでの下級審の判決が覆される可能性があるということを意味する。
最高裁の判決内容により、今後の実務に与える影響は少なからずあるものと考えられ、もし相続人側が勝訴ということになれば、今後の路線価の在り方やいわゆる伝家の宝刀といわれる「評価通達6項」の運用についても見直されることが予想される。