相続財産の寄附
相続をきかっけとして、財産を寄附する人が増えています。一定の要件を満たせば相続税が非課税扱いとなることが大きなメリットです。この寄付が被相続人によるものか、相続人によるものかによって取扱いが異なります。
(1)被相続人が遺言により寄付する場合
被相続人が遺言により財産を国、地方公共団体または公益を目的とする事業を行う特定の法人へ寄付する場合には、その寄附をした財産は相続税の対象とはなりません(=非課税)。
さらに、寄付の相手先が所得税の寄付金控除の対象となる特定公益法人やNPO法人の場合は、被相続人の準確定申告(所得税)の計算上、寄付金控除の適用があります。
(2)相続人が寄付する場合
被相続人が生前に「自分が死んだら、〇〇を●●へ寄付して欲しい」と話していたのを聞いていた相続人が、その遺志に従って遺産の一部を寄附したとします。もともとは被相続人の想いだったとしても、このケースでは相続により財産を引き継いだ相続人が自分の意思で財産を寄附したという扱いになります。
一度相続により財産を引き継いでいるので、上記(1)とは異なり相続税がかかります。ただし、相続税の申告期限までに寄附し、相続税の申告書にこの規定を受ける旨を記載する等して申告する場合には、相続税は非課税となります。
さらに、(1)と同様に所得税の寄付金控除の対象となる先への寄附の場合は、相続人の所得税確定申告の計算上、寄付金控除の対象とすることができます。
このように、相続財産を寄付する場合は、相続税及び所得税において恩恵を受けることができます。どれだけメリットがあるかは、相続税・所得税の税率次第となります。
また、不動産を寄付する場合には注意が必要です。含み益がある不動産を寄付した場合、寄付であってもそれまでの含み益を清算するという所得税の考え方により原則含み益に対して課税されます。ただし、寄付の日から4か月以内(11月16日以後の寄附については確定申告期限までに)承認申請書を提出することにより、非課税の扱いとすることができます。