暦年贈与と精算課税、どっちがお得2?
前回の続きです。毎年の贈与の金額が相続が発生した際にどのように影響するのか、持ち戻す財産の額と税額で比較してみます。
(相続税率を40%と仮定しています)
【ex.1 相続開始前10年間、毎年110万円を贈与していた場合】
(1)暦年贈与
①7年分を持ち戻し 110万円×7年間=770万円
②持ち戻す財産の額 770万円-100万円(非課税枠)=670万円
③負担する税額 贈与税額は0円、相続税額は670万円×40%=268万円(不利)
(2)相続時精算課税制度
①持ち戻す財産の額 (110万円-基礎控除110万円)×10年間=0円
②負担する税額 贈与税額も相続税額も0円(有利)
【ex.2 相続開始前10年間、毎年500万円を贈与していた場合】
(1)暦年贈与
①7年分を持ち戻し 500万円×7年間=3,500万円
②持ち戻す財産の額 3,500万円-100万円(非課税枠)=3,400万円
③負担する税額
500万円に対する贈与税額は毎年48.5万円のため、10年間で485万円の贈与税額を納付
実質的な贈与税額は、贈与が完成した48.5万円×3年間=145.5万円
相続税額は3,400万円×40%=1,360万円増えますが、7年間分の贈与税額339.5万円を相続税から
控除できるため、1,360万円-339.5万円=1,020.5万円の負担
∴ 贈与税額+相続税額=1,166万円(有利)
(2)相続時精算課税制度
①持ち戻す財産の額 (500万円-基礎控除110万円)×10年間=3,900万円
②負担する税額
3,900万円-非課税枠2,500万円=1,400万円
生前の贈与税額は1,400万円×20%=280万円
財産の全額が相続税の計算に組み込まれるため、実質的な贈与税額は0円
相続税額は3,900万円×40%=1,560万円増えますが、生前の贈与税額280万円を全額相続税額から
控除できるため、1,560万円-280万円=1,280万円
∴ 贈与税額+相続税額=1,280万円(不利)
暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらが有利かは、贈与する財産の額、贈与する年数及び贈与される方がどれぐらいお元気でいられるかによっても変わってきます。
ただ、上記のように110万円以下を贈与するのであれば、精算課税制度を選択して贈与した方が持ち戻しに引っかかるリスクがなくなります。
若いうちは暦年贈与で、年を取ってからは相続時精算課税制度で、というのが大まかな対策になるのではないかと思われます。