2023年税制大綱 改正情報(2)
1.相続時精算課税制度にも110万円の基礎控除が創設
これまで相続時精算課税を選択した後の特定贈与者(祖父母や父母)からの贈与については、どんなに少額でも贈与税の申告が必要(累計で2,500万円までは贈与税は非課税、2,500万円を超えれば超えた額に対し一律20%の贈与税)でしたが、暦年贈与と合わせる形で年間110万円までの贈与については相続時精算課税制度においても非課税扱いとなり、贈与税の申告が不要となりました。
2.生前贈与加算との関係
前回、暦年贈与について持ち戻し期間(相続財産に加算する期間)が3年から7年に延びたことをご紹介いたしました。相続時精算課税制度は、そもそもその特定贈与者からの贈与財産の全てを相続財産に加算する制度でしたが、毎年110万円以下の部分は例え7年以内の贈与であっても加算しなくてもよいこととなります。
3.適用時期
令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産から適用になります。
4.暦年贈与と精算課税、どちらを選択すると有利になるか
贈与者の年齢、所有する財産の額、贈与する財産の額によりケースバイケースとなりますが、多額の財産があり相続税率が高くなる場合は次のように考えることができます。
① 贈与者がまだ若く相続を考えなくてもよい(相続まで7年以上ある)場合で贈与財産が110万円以下のケース
相続財産への加算を考慮する必要がないため、暦年贈与でも精算課税でも有利不利はありません(突然の相続に備えて精算課税を選択するメリットはあります)
② 贈与者がまだ若く相続を考えなくてもよい(相続まで7年以上ある)場合で贈与財産が110万円を超えるケース
相続財産への加算を考慮する必要がないため、贈与者の財産から切り離せる暦年贈与の方が有利となります
③ 贈与者が高齢(相続発生まで7年以内の可能性がある)で贈与財産が110万円以下のケース
暦年贈与の場合は贈与財産の合計額から100万円を控除した額が加算され、精算課税の場合は毎年110万円以下の金額は加算対象とならないため精算課税を選択した方が
有利となります
④ 贈与者が高齢(相続発生まで7年以内の可能性がある)で贈与財産が110万円を超えるケース
暦年贈与と精算課税のいずれの制度においても加算されることになります。ただし、加算される財産の額から控除できる額は、暦年贈与の場合は100万円、精算課税の
場合は毎年110万円以下の金額(例えば110万円×7年分=770万円)となるため、精算課税を選択した方が有利と考えられます
※現時点では概略のみのリリースで詳細は公表されておらず、上記取扱いと異なる可能性があります