未支給年金は相続税の課税対象となるか?

 老齢基礎年金(国民年金)の給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給されるべき年金給付でまだその者に支給されていない年金があるときには、その死亡した者の配偶者(内縁の配偶者を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等以内の親族で、その者の死亡当時その者と生計を同じくしていたものが、「自己の名」で、その未支給の年金の支給を請求することができることとされています。
 この場合、その未支給年金に係る請求権(以下「未支給年金請求権」)は相続税の課税対象となる財産に含まれるのでしょうか?

 答えは否、つまり未支給年金請求権は相続税の課税対象にはなりません。ただし、その遺族が支給を受けたこの未支給の年金は、その遺族の一時所得(所得税)に該当することとなります。

 理由としては、下記の考え方があるためです。
 ①国民年金法第19条の規定では、同条が未支給年金の支給請求することのできる者の範囲及び順位について、民法の規定する相続人の範囲及び順位決定の原則とは異なった定め方をしており、民法の相続とは別の、被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とした立場から未支給の年金給付の支給を一定の遺族に対して認めたものと解されている。
  →未支給年金請求権を本来の相続財産として相続税の課税対象となると解することはできない。

 ②相続税法第3条第1項第6号に規定するみなし相続財産には該当しない
  →同号に規定する「これに係る一時金」は、継続受取人が受給を受けるべき「定期金が特別に又は選択的に一時金とされる場合の一時金のみが含まれる」こととされている趣旨であるのに対し、未支給年金については、定期金ではなく最初から一時金のみを支給するものであるため、相続税の課税対象となる「みなし相続財産」とは異なる。

 以上から、未支給年金請求権については、死亡した受給権者に係る遺族が、当該未支給の年金を自己の固有の権利として請求するものであり、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはならないこととなります。
 なお、遺族が支給を受けた当該未支給の年金は、所得税基本通達34-2により、当該遺族の一時所得に該当します。

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